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【2006.09.05 Tuesday 】 author : スポンサードリンク
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犯罪的笑顔
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【2006.01.20 Friday 17:06】 author : ポルキス佐藤
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SUMMER_DOWN
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【2005.10.17 Monday 11:47】 author : ポルキス佐藤
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アミバ
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【2005.10.17 Monday 11:43】 author : ポルキス佐藤
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別れの理由
女はトイレットペーパー使いすぎるんだよ。。。

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【2005.09.29 Thursday 23:01】 author : ポルキス佐藤
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夏に囲んだ炎とレーニンの死体 後編
誕生日パーティの日以来、僕達が泊まっている宿舎の入り口にはいつもロシアの子供達が集まるようになった。僕が外に出るとサッカーや川遊びに誘われ、一夜にして人気者になっていた。僕は照れ臭くて仕方がなかったけれど、その空気を心地よく感じていた。何だか世界中の全ての事がうまくいっているかのような爽快さがそこにはあった。ただサーシャの姿がそこにはなく、僕の日常と非日常の判断を狂わせた。

数日経ったある夕飯時に、少年団の一人がホームシックにかかり大人達が食堂で彼をあやしていた。彼にとって固いパンも、甘ったるい炭酸ジュースも、艶のないボソボソしたライスも、全てが嫌になっていたようだ。その日はリーダーの部屋に仲間達で集まって語り合った。全員が口を揃えてこのまま日本を捨ててもいいと思っているようで、僕はほっとした。リーダーは特にその意志が強いようで、僕達にある提案を持ちかけた。


パスポート破り捨てないか?


パスポートを紛失すれば国境を越える事が出来ない。だからパスポートだけは無くさないように。両親も、少年団をまとめる大人達も、口を揃えて言う言葉を僕らは大人達の考える・その言葉の目的・とは全く逆方向の目的として消化しようと考えた。


ここを離れる最後の日、キャンプファイヤーをする。その火の中にみんなで一斉にパスポートを投げようぜ


その夜は遅くまで盛り上がった。僕達にとって冒険逃避の区別なんて分かるわけもなく、また、独立利己の区別すらも曖昧で不透明なものだった。ただその時、僕にとっての冒険とは逃避という行為を美しく着飾る便利な言葉だった。



最後の夜はそれからあっという間にやってきた。キャンプ場で過ごす最後の夜、しかし僕達にとってはそれは最後であり、また始まりの夜でもあるはずだった。僕達は夕暮れのオレンジ色の光の中でリーダーの部屋にパスポートを持って集まった。

いよいよだな

みんな本当にいいんだな?心の準備は出来てるか?

リーダーが一人一人の意思をゆっくりと聞いていく。そこにいた誰もが静かに頷いた。それぞれの意思を確認しなければいけない程に、ほんの少し傾けば全てが崩れてしまう程に弱く脆い僕らの心は、あの冒険する事を決めた夜からすでに傾き始めていたのだろう。僕らは一人で判断する事も、行動する事も、まだ出来ない子供なのだと少しづつ気付きはじめていた。

パスポートをズボンのポケットに入れたまま、僕達は川辺のキャンプファイヤーに向かった。ロシアの子供達は既に集まっていて、僕達を笑顔で迎えてくれた。ロシア民謡が流れ出し、僕達は輪になって踊った。曲が止まり、みんなが見守る中、たいまつに火が灯り、キャンプファイヤーの中に放り込まれた。火は勢いよく立ち昇り、炎は空に向かってゆく。炎を囲み、僕達はしばしの間揺らめく炎を眺めた。
パスポートがポケットの中に入っている事を思い出し、周りに目をやったが、みんな炎を眺め呆然としていた。リーダーは泣いていた。その涙の意味は今でも分からないけれども、僕らの傾いた決意に終止符を打つには充分だった。そしてその涙を見て、日本に帰るのだと改めて実感し、僕も涙が流れてきた。その場に座り込み、僕は涙でぼやけた炎を見つめながら、ある一つの事を心に誓った。

肩を叩かれ振り向くと、いつの間にかサーシャがそこにいた。



サーシャは僕に手を差し伸べた
炎の明かりに照らされたその姿は幻想的で、僕がその手を掴めば何処までも行けそうな気がした。
僕はサーシャが差し伸べた手を掴んだ。
僕が立ち上がるとサーシャは僕の手を引き歩き出した。何処に行くのか分らなかったけれど、僕はきっとここではない何処かへ行きたかったんだろう。
炎を背に歩き出し、やがてその明かりが届かなくなると月の明かりが今度は僕らの道案内をしてくれた。右も左も木々に囲まれた細い道を抜けるとそこに小さな草原があった。後ろを振り向くと木々の上に月が出て、その木々の間の小さな道の先にさっきまで僕達がいた炎が小さく見えた。

サーシャがその場に座り、僕はサーシャの隣に腰を下ろした。
サーシャに伝えたい言葉はたくさんあるのに、僕はそれを伝える術を知らなかった。僕は必死に覚えたいくつかのロシア語と英語を混ぜ合わせ、サーシャに語りかけてみたけれど、返ってくる言葉を理解するには不十分すぎて僕は首を捻るばかりだった。その時、サーシャは突然僕にキスをしてくれた。ファーストキスはあまりにも突然で、衝撃的だった。
時が止まるなんて現象はきっとこの世界で起こり得ないけれども、
それならばきっとあの夏、あの草原での出来事もまた、起こり得ない事なのかもしれない。そしてそれが起こった事で世界の可能性は広がったのではないだろうか。。。

その後僕とサーシャはその場にどれだけの時間いたのか覚えていない。炎の勢いはだいぶ弱まっているようだった。そして彼女は一枚の紙切れをポケットから取り出して、僕に渡してくれた。そこにサーシャの住所が書いてあった。

約束してくれる?私に手紙を書いて



僕はここではない何処かへ冒険しようと炎を見て決意した。けれどもそれは現実から逃避しようしていただけだった。
彼女の紙切れが何よりも現実的でいて
何よりも確かな物であり
何処までも透明だった。


僕はその紙切れを炎の中に投げてしまおうとしていたパスポートの中に閉まった。


手紙を書こう


いつか必ずサーシャにまた会いにこようと、僕はその気持ちをめいいっぱい奥歯で噛み締めた。炎からはまたロシア民謡が流れ始めた。僕はサーシャの手を掴んだ。今度は僕が手を引っ張った。

戻らないといけないから…

少しだけ大人になれた気がした。


みんなの元に戻るとリーダーの涙はもう止まっていて、炎を囲んでみんなが手を繋いで踊っていた。

『ここに入りなよ』

リーダーの隣に僕とサーシャは入った。繋いでいた手を離さずに、その繋いだ手は輪の中に納まった。









 〜〜エピローグ〜〜

帰国後、僕は手紙を書いた。
ロシア語は分からなかったけれど、団員が手紙を送りたいならば翻訳して届けてあげると大人の人が協力をしてくれたので僕は二週間後に手紙を送った。一度大人に見られる事もあって、僕は慎重に言葉を選んだ。もう一度会いたいという気持ちと、いつか必ず会いに行くという決意を手紙に込めた。僕とサーシャの写真も中に入れた。

その一週間後

ソ連が崩壊した
テレビではつい三週間前に見たレーニン像がクレーンで持ち上げられ、撤去されていた。モスクワで見たレーニンの死体も、僕が見てきた風景全てがブラウン管を通して壊されていく。
僕は涙をこらえて父さんに聞いた。父さんの口から社会主義について聞かされたけれど、僕は理解出来なかった。僕が聞きたい事は、そんな事ではなかった。ただ純粋に悲しかった。ただ純粋に悔しかった。僕にとって世界が資本主義でも、民主主義でも、社会主義でも、どうでもいい事だった。ただ純粋にサーシャの笑顔が好きだった。


僕はしばらく食欲もなく、何をする気力も無かった。
緊急で僕ら使節団が呼ばれ、大人達から簡単な説明があった。そして最後にこう締めた。
『君達はいい体験が出来たと思う。君達が世界に関心を持って、これから多くを学び、成長していく姿を期待している』



サーシャからの手紙は戻ってこなかった。
そしてサーシャが僕の手紙を読んでくれたのかも分からない。



僕があの夏、みんなで囲んだ炎に誓った事は
僕とレーニンだけの秘密だ。
【2005.06.26 Sunday 01:04】 author : ポルキス佐藤
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